アートポスターコレクションの勧め

シャガール 愛のリトグラフを集めて −シャガールはトータルで全66点ー 谷川憲正さん

アートポスターとは画家が個展及びグループ展などに際し、自ら制作したもので、ムルローやマーグなどの伝統的な工房でリトグラフ・シルクスクリーンなどの版画の技法で制作された作品と私共の画廊では定義していますが、色々な解釈があっていいと思います。あまり堅苦しく考える必要はないでしょう。なぜなら、画家にとって意味あるポスターなのに、それに該当しないケースが多々あるからです。
美術史的に名を成す巨匠達が、限定部数で制作した芸術性の高いポスターは欧米などでは早くからコレクションの対象となっております。そして、それをサポートする様々な資料があります。ピカソ、シャガール、ミロはアートポスターのレゾネが出版されています。

圧巻なのはピカソでしょうか、その資料は全四巻で、2,425ページもあり驚きです。
最近では多くの画家達が版画のレゾネにアートポスターの詳しいデーターを掲載しているケースもありますので、コレクションされる方は参考にされることをお勧めします。
今回はシャガール特集ということですが、人気のシャガールは早くからこのアートポスターを制作しています。

シャガール:サーカス 黄色のリング

私はその頃、フリーライターの傍ら、画廊らしき仕事を始めたわけですが、手持ち資金もなく、苦肉の策として好きだったシャガール、ピカソ、クレー、カンデンスキー、ミロなどのアートポスターを展示したのが最初です。
その頃、シャガールの「ロミオとジュリエット」が4〜5万(シート)だったと思います。初期のアートポスターで最近はめったにみかけなくなった作品も2〜3万でした。シャガールのポスターはバブル崩壊に関係なくプライスが徐々に高くなってきました。シャガールの高騰は限定部数のオリジナル作品が高くなり、そのために、ノーサインでオリジナル作品、及びリトグラフ刷りのアートポスターの作品でプライスを押し上げているようです。

ちょっと可笑しい現象は、アートポスターには初期のオリジナルリトポスターと、シャルル・ソルリエが制作したリトグラフポスターがあります。前者の方は骨太の作品で素朴ですが、ソルリエの制作した作品は一般的に華やかです。パリでのプライスは勿論、前者が高いのですが、日本ではソルリエ版の華やかな作品に人気があります。

日本ではいまだアートポスターと言うと、取り扱い画廊もあまり多くないようです。しかし、ロートレック、ミューシャなどのオリジナルポスターは数万ドルで欧米のオークションで落札されていることは衆知のことでしょう。ピカソやシャガールの代表的なアートポスターも最近ではクリスティーズ、サザビィーズといったメインオークションに出品されるようになってきました。どうも日本では高くないと美術品ではないという部分があるのが残念です。安くても将来性のあるもの、高くとも将来性のないものと、美術品は色々です。

シャガールのアートポスターはムルローのレゾネに掲載されているだけで60点、それにレゾネの出版後に、シャガールが亡くなるまでに制作したものが6点ありますのでトータルで66点です。シャガールのポスターにはどうしても4〜5種類の作品を探すことが困難な作品があります。幻のポスターです。これはパリのディーラーも探すことが難しいようです。「シャガールのアートポスターでコンプリートセットがあるよ・・・」と言うオファーを海外のディーラーからありますが、この4〜5点が欠如している事を指摘すると、それはないのが当然なのだという答えが返ってくるものです。でも、そういう話もここ数年ありません。4〜5点がないセットを探し出すことも難しくなってきているようです。

されどポスター 将来を見据えてコレクション

私共が紹介したコレクターの方々で、この4〜5点以外はコレクションを終えた方が5〜6人いらっしゃいます。数万円の時代からのコレクションですから、独身の男性がほんの少し飲む酒(?)を控えて貴重なコレクションを完成していかれた過程をこの十数年の間にみてきました。最近、入手困難な作品がありますから、今度は私共の方から作品を売ってくださいとお願いしても、なかなかと譲っていただけません。皆様、楽しみながらの収集したものだから、自分のコレクションにはさまざまな想い出があるようです。恋人が出来てプレゼントした「ソロモンの雅歌」、結婚記念として買った「ロミオとジュリエット」、子供が誕生して求めた「青の中の天使」とその時々に作品を増やされています。たかがアートポスターという発想から始まったのですが、すばらしい出会いに恵まれました。画家は未知の領域を手探りの状態で生きていくことを宿命づけられています。これは画家に限ったことではないかもしれません。
しかし、たかがアートポスターの領域においても、きちんと将来を見据えて制作し残していくという画家の姿勢から多くのことを学ぶことが出来る思いがします。

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